職場環境・多文化共生2026-09-15監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

外国人材と働く東海の介護現場の実態と転職者が見るべき視点

この記事の要点

「シフト表に外国籍のスタッフの名前が増えてきて、正直どう接したらいいのか分からなかったんです」——東海のある特別養護老人ホームで働く30代の介護職員が、僕にそう打ち明けてくれたことがあります。

0.結論:外国人材と共に働くことは、東海の介護現場ではもう「例外」ではない

結論から言うと、外国人材と一緒に働く介護現場は、東海地方ではすでに珍しいものではなく、今後さらに広がる前提でキャリアを考えたほうが現実的だと僕は考えています。出入国在留管理庁の公表資料によれば、介護分野で就労する外国人材は制度開始直後の数百人規模から、ここ数年で全国的に数万人規模まで増加しており(出典:出入国在留管理庁「特定技能制度運用状況」)、製造業の集積地である愛知・岐阜・三重の東海3県も、受け入れが進む地域のひとつです。

この記事では、外国人材と働くことになった介護職の方の不安、そしてこれから東海で介護職を目指す外国籍の方双方に向けて、現場で実際に起きていること、施設を見極めるポイント、資格・在留資格まわりの実務を整理していきます。

1.東海の介護現場で外国人材が増えている理由と4つの受け入れルート

介護分野の外国人材受け入れには、大きく分けて4つの制度が併存しています。それぞれ在留期間や日本語要件、介護福祉士資格との関係が異なるため、現場で「なぜこの人はこういう働き方なのか」を理解しておくと、指導や協働がしやすくなります。

制度名在留期間の目安日本語要件の目安資格取得との関係
EPA介護福祉士候補者就労開始から最大4年程度受け入れ時点で一定の日本語力を選考在留期間内に介護福祉士国家試験合格が前提
技能実習「介護」最長5年(育成就労へ移行予定)入国時N4相当以上が目安実務経験を積みながら国家試験を目指す例も
特定技能1号「介護」通算5年まで日本語能力試験N4以上+介護技能評価試験合格介護福祉士取得で在留資格「介護」へ移行可能
在留資格「介護」更新制で長期就労可介護福祉士資格取得が前提資格保有者として日本人職員と同待遇が原則

僕の体感値で言うと、東海地方の現場で最も増えているのは技能実習と特定技能の併用型です。技能実習として数年働いたのち、そのまま特定技能に移行して勤務を続けるケースが多く、施設側も「育成前提」で採用する動きが定着してきています。なお技能実習制度は、2024年に成立した改正法により2027年めどで「育成就労制度」へ移行する予定で、転籍要件の緩和などが検討されています。制度の細部は今後も変わる可能性があるため、採用担当者・転職者ともに継続的な確認が必要です。

地域差にも触れておくと、自動車関連産業の集積地である愛知県豊田市や岐阜県可児市、三重県四日市市の周辺では、もともと外国籍住民の割合が高く、介護施設側も生活面のサポートに慣れているケースが多いというのが僕の観測です。逆に外国籍住民の少ない地域の施設では、受け入れ実績自体が浅く、体制づくりが手探り段階にとどまっていることもあり、同じ東海地方でも市町村単位で温度差があると感じています。

2.現場でよくある摩擦と、乗り越えている施設の共通点

外国人材と働くうえでよく聞くのは、言葉の壁そのものよりも「暗黙の了解が伝わらない」ことへの戸惑いです。冒頭の職員も、「見て覚えて」という日本の職場でよくある指導スタイルが、母国語でないスタッフにはそのまま通じなかったと振り返っていました。

一方で、僕が話を聞いた東海の複数の施設では、摩擦を乗り越えている共通点がありました。それは、指示を「短い日本語+実演」で伝える、記録や申し送りにルビや図解を併用する、母語が同じスタッフ同士でフォローし合える配置にする、といった工夫です。特別な研修を入れなくても、これらは日本人職員側の意識づけだけで始められる対応です。

逆に定着がうまくいっていない施設に共通するのは、「教育担当者を明確に置かず、現場任せにしている」というパターンでした。これは外国人材に限らず、新人育成全般に言えることですが、母語も文化的背景も異なる相手が対象になるほど、担当不在の影響は大きく出ると僕は感じています。

名古屋市内のある通所介護事業所では、ベトナム出身の特定技能スタッフが入職した際、最初の3ヶ月間だけ日本人職員1名をペアにする「バディ制度」を試験的に導入したところ、記録の記入ミスや連絡漏れが目に見えて減ったと担当者が話していました。制度化された仕組みというより、現場のちょっとした工夫で改善する余地が大きい領域だと僕は考えています。

3.外国人材と働く施設を転職先として選ぶときのチェックポイント

これから転職先を探す方にとって、「外国人材が多い施設かどうか」自体は良し悪しの基準にはなりません。見るべきは、受け入れ体制がどれだけ整っているかです。面接や見学の際に、次のような点を確認してみてください。

これらへの回答が具体的であるほど、その施設は多様な人材を「戦力化する仕組み」を持っていると判断できます。逆に「特に決めていません、現場でうまくやってもらっています」という回答しか返ってこない場合は、日本人職員側の負担も相応に大きい可能性があると考えたほうが無難です。

実際の質問の仕方としては、「外国籍のスタッフさんは何名くらい在籍されていますか」という数の質問だけで終わらせず、「入職後、最初の半年間はどんなサポート体制を組んでいますか」と踏み込んで聞くことをおすすめします。この一歩踏み込んだ質問への答え方の丁寧さで、面接担当者自身が現場をどれだけ理解しているかも見えてくるというのが僕の実感です。

4.外国人材本人が東海で介護職としてキャリアを築くための実務ステップ

外国籍の方がこれから東海で介護職を目指す場合、在留資格ごとに必要な要件が異なります。特定技能1号「介護」であれば、日本語能力試験N4以上または国際交流基金日本語基礎テスト合格に加え、介護技能評価試験・介護日本語評価試験への合格が必要です。技能実習経由であれば、一定の実務経験を経たのち特定技能へ移行する道が一般的です。

介護福祉士資格の取得を目指す場合は、実務経験ルートであれば実務経験3年以上と実務者研修修了が要件になります(出典:公益財団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験の概要」)。国家試験合格後は在留資格が「介護」に切り替わり、日本人職員と同じ待遇・キャリアパスで働けるようになる点は、本人にとって大きな目標になります。

東海3県は自動車関連産業を中心に外国人労働者の集積地としても知られており、介護分野に限らず日本語学習支援や生活相談の窓口が比較的整っている地域だと僕は感じています。自治体の国際交流協会や日本語教室を、資格取得の合間に活用している方も少なくありません。

具体的には、愛知県国際交流協会や岐阜県国際交流センターなどが実施している日本語学習講座や生活オリエンテーションを、勤務先の研修と並行して受講している方の話をよく聞きます。国家試験の過去問対策だけでなく、専門用語の読み替え支援を行っている団体もあるため、勤務先任せにせず自分から情報を取りに行く姿勢が、結果的に試験合格までの近道になっているというのが僕の見立てです。

5.日本人スタッフ側が身につけておくと得る姿勢・スキル

外国人材と長く一緒に働くうえで、日本人職員側に特別な資格は必要ありません。ただ、僕がこれまで見てきた「うまくいっているチーム」のリーダーには、共通する姿勢がありました。それは、「正しい日本語」より「伝わる日本語」を選ぶ意識です。二重敬語や曖昧な指示語を避け、短い文で具体的に伝えるだけで、指導の行き違いはかなり減ります。

また、相手の母国の介護観や家族観に興味を持つ姿勢も、チームの空気を変えます。日本の介護現場特有の「察する」文化を前提にせず、必要なことは言葉にして伝え合う。これは外国人材とのコミュニケーションのために身につけたスキルが、結果的に日本人同士の申し送りの精度も上げるという、副次的な効果につながっている施設もありました。

ちょっとした挨拶を相手の母語で覚えるだけでも、関係性は大きく変わります。三重県のある施設では、日本人職員が休憩時間にインドネシア語の簡単な挨拶を教えてもらい、逆に日本語の敬語表現を教える、という交換学習が自然発生的に始まったそうです。業務外の小さなやり取りが、結果として業務中の連携のしやすさにつながっているという話は、僕にとっても印象的でした。

6.よくある失敗と対処

僕がこれまで聞いてきた中で特に多い失敗パターンをいくつか整理しておきます。ひとつ目は「日本語能力を過信・過小評価する」ことです。N4相当の資格を持っていても、専門用語や方言、早口の会話には対応しきれないことがあり、逆に日常会話が上手だからといって記録業務の文章作成まで問題なくできるとは限りません。対処としては、業務ごとに必要な日本語レベルを分けて確認し、記録業務では定型フォーマットやテンプレート文を用意することが有効だというのが僕の見立てです。

ふたつ目は「宗教・食事・生活習慣への配慮不足」です。礼拝の時間や食事制限について、施設側が把握しないまま勤務シフトを組んでしまい、後から本人が言い出しにくい雰囲気になってしまうケースを聞いたことがあります。入職時の面談で生活習慣について具体的に確認し、シフトや休憩時間の調整余地をあらかじめ示しておくことが、後々のすれ違いを防ぎます。

みっつ目は「相談窓口が実質的に機能していない」ことです。制度上は監理団体や登録支援機関への相談窓口があっても、実際には日本語での相談しかできず、本人が使いこなせていないケースが少なくありません。定期的な個別面談を、通訳アプリなども併用しながら実施し、「困っていることはないか」を施設側から能動的に聞きにいく姿勢が、離職を防ぐうえで効いてくると僕は考えています。

7.施設種別で見るケース比較

外国人材の受け入れ状況は、施設種別によっても傾向が異なります。転職先を比較検討する際の参考として、僕が見聞きした範囲での傾向を整理します。

施設種別受け入れ状況の傾向見るべきポイント
特別養護老人ホーム夜勤を含むシフト制で受け入れが進みやすく、技能実習・特定技能の在籍数が多い傾向夜勤帯の緊急対応マニュアルが多言語・平易な日本語で整備されているか
デイサービス日勤中心で比較的受け入れやすいが、送迎業務の運転要件で配置が限定される場合がある送迎ルートや利用者情報の申し送り方法が口頭のみに偏っていないか
訪問介護単独訪問が基本のため、日本語での臨機応変な対応力が求められ受け入れは相対的に慎重同行訪問期間の長さと、緊急時の連絡フローが明確か

この比較からも分かるとおり、施設の種類によって外国人材に求められる日本語力や配置の柔軟性は変わってきます。転職を考える方は、自分がどの施設種別を志望するかに応じて、確認すべきポイントの重心を変えるとよいというのが僕の考えです。

(結論)

外国人材と一緒に働く介護現場は、東海地方ではすでに一時的な現象ではなく、制度としても数の面でも定着しつつある働き方の一部だと僕は考えています。転職を考える皆さんには、外国人材の多寡そのものではなく、受け入れ体制の中身を見て職場を選んでいただきたいと思います。皆さんいかがでしたでしょうか。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 外国人材が多い介護施設で働くのは大変ですか?

結論から言うと、大変さの本質は「外国人材が多いこと」自体ではなく、施設側の受け入れ体制の有無にあります。日本語支援担当者や指導フォーマットが整っている施設であれば、負担は特別大きくならないというのが僕の体感です。

Q. 外国人が東海で介護職として働くにはどんな在留資格が必要ですか?

主にEPA介護福祉士候補者、技能実習「介護」(2027年めどで育成就労へ移行予定)、特定技能1号「介護」、介護福祉士資格取得後の在留資格「介護」の4ルートがあり、それぞれ日本語要件や在留期間が異なります。

Q. 技能実習制度が廃止されると聞きましたが、今後の人材確保はどうなりますか?

2024年成立の改正法により、技能実習は2027年めどで育成就労制度へ移行する予定です。転籍要件の緩和などが検討されており、東海の介護現場でも運用の変化を継続的に確認しておく必要があります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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